本当はできるのにできないフリは本当に迷惑
「教場」という、警察学校が舞台の小説を読みました。
- 作者: 長岡弘樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/12/25
- メディア: Kindle版
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警察ものの小説はたくさんありますが、警察学校が舞台の小説というのは聞いたことがなかったので興味深く、以前から読みたいと思っていたんです。
小説はオムニバス形式で、同じ警察学校の学生でも、章ごとに主人公が変わります。
短編集のような感覚で読みやすく、すぐに読み終えることができました。
実は少し前に借りて読んだ本なので、個々のタイトルや登場人物の名前までは覚えていないのですが、一番最初に収録されているエピソードは印象深いです。
主人公は成績があまり良くないということになっていますが、実は本当に出来が悪い友達に合わせて出来ないフリをしているだけなんです。
この出来が悪い友達というのは、主人公が昔事故に遭ったときに助けてくれた巡査の息子さんで、その恩もあって主人公は彼に優しく接して、仲良くしています。
最終的に、出来の悪い友達は学校をやめるのですが、辞める直前に入浴剤と浴槽洗いの洗剤(バスマジックリン的なもの)を混ぜて有害なガスを寮内に蔓延させ、主人公を手錠にかけて寮内に閉じこめ殺そうとします。
この時、友達は主人公に、自分(友達)にとって、警察学校で何が一番嫌いだと思うか尋ねます。
そこで、主人公が返した答えは「教官からのしごき」。
ところが、友達は一番嫌いなのは主人公だと答えました。
主人公のどこが嫌か、具体的に友達のセリフとしては出てこないのですが、「合わせてやってる」のは友達に伝わってたんでしょうね。
こういうのを、「自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪」っていうんじゃないでしょうか。
なんでもソツなくこなす主人公も共感できませんが、もっとタチが悪いと思います。
主人公側の視点での描写なので、友達から殺されかける時にはハラハラしましたが、出来が悪い側の人間としては、正直スッキリです(^^;
全5話のうち、前半の2話は「できる主人公ができない友達に優しくしてやってる」話だったので、痛い目に合っていい気味だと思います。
最後の章は卒業文集をまとめる話で、「修羅場に遭った学生は事実を淡々と記している云々」という担当教官のセリフがありましたが、最初の2人に関しては自業自得だと思うので、違和感を感じました。
ところで、「教場」はフィクションですが、警察学校での授業風景や寮での出来事を読んで、自分は絶対すぐ脱落することを確信してますw
犯罪者や、タチの悪い酔っ払い、街にたむろする不良など、めんどくさい&危険な人の相手をするくらいですもんね…
フィクションとはいえ、脱落者も少なからずいるようなので、最後まで残った人は拍手ものです。
以前、色々あって警察に相談する機会が何度かあり、その時のおまわりさんは親身になって聞いてくれて感謝しましたが、感じの良いおまわりさんでも、こういった厳しい訓練を経てきたんだなあ…と思うと胸が熱くなります。
本日も、ありがとうございました。