松本清張作品
1週間のほとんどを家で過ごすようになってから、読書をする機会が増えた。
もともと読書は趣味のひとつだった。 とはいえ、図書館で借りて読むことがほとんどだけれど。
図書館は良い。 幸い市立図書館が自宅近辺にあるため、 返却しに行くと必ずといっていいほど長居し、面白そうな本を片っ端から借りてくる。 その図書館はつい最近まで働いていた職場への通勤経路でもあり、職場からは歩いて10分程度だった為に運動と気分転換を兼ねてお昼を食べに出かけていた。
その中でも、必ずと言っていいほど借りているのは松本清張作品。
おそらく2年前くらいからハマっていて毎回違う本を借りているが、作品数が膨大でまだまだ読み切れていない。
今回借りたのは『高校殺人事件』という小説である。
光文社文庫版・裏表紙カバーでのあらすじでは
武蔵野台地の一画で、多摩川を見下ろす城跡に私たちの高校はある。高校三年生の私の仲間で詩人ポーの心酔者で、クラスメイトや先生から愛されていた通称「ノッポ」が学校裏の沼で絞殺死体となって見つかった。彼の死をきっかけに学校の周りで不思議な出来事が続発する。はたして事件の真相とはー。清張作品では稀な青春推理小説で、瑞々しい感覚を放つ一作。
とある。
文庫版は本編のあらすじが裏表紙に掲載されているのが有難いところ。
確かに、今まで読んだ清張作品のほとんどが、社会派ミステリーや時代物の小説である。
この頃は青春ものは全くといっていいほど読まなくなったけれど、清張さんの作品ならば読んでみよう。と思い借りてみた。
この『高校殺人事件』の舞台は東京都の武蔵野地域らしいが、この作品が発表された1959年当時はかなり田舎だったらしく、のどかな風景が描かれている。
武蔵野地域はこの作品以外でも清張さんの作品の舞台になることが多い。
現在は開発が進んだ武蔵野地域からは想像しづらいけれど、清張さんの風景描写はたいへん見事なため、その風景をありありと思い描くことが出来る。
さて、この『高校殺人事件』。
青春推理小説という謳い文句というだけあって、清張作品の中でもかなり読みやすい。
主人公は父の仕事の関係で地方から東京に越してきて1年が経ち、今では男女7人の仲良しグループのうちのひとりになっている。 これまた、探偵役は1人または2人で行動することが多い松本清張ミステリーでは異例。 同じグループに男女がいても恋愛関係は一切出てこないのが良い。(高校生の仲良しグループってそんなもん…?)
後半、主人公のいとこ同い年の女の子が久しぶりに主人公の前に現れるが、恋愛関係の描写はそれくらいである。それすらも、恋にまで発展しない、淡い気持ち。久しぶりに会ったらすっかりきれいに女らしくなっていてドキッとした程度。
仲良し7人グループとはいえ、殺された「ノッポ」は飄々としていて一匹狼的なキャラクター。暗い詩を好む。
清張作品の中でもライトな作品では、 飄々としているが主要な人物(大抵は刑事、記者、作家、画家あたり)であることが度々ある。 この作品では、ノッポが最もその位置に近いように思う。
この人の作品は全体的に暗い、というか影があるのだ。
サスペンスやミステリーが中心の作品が多いのだから当然といえば当然なのだが、それにしても暗い。天気でいえば曇り空、明るさでいえば豆電球の明るさとでもいおうか。
そこがまた魅力的。
何故か清張作品を読むときは、ゆらゆら帝国の『空洞です』が頭の中で流れる。 ちなみにこの『空洞です』も大好きな曲。
1992年に逝去するまで、膨大な作品を残した松本清張。 1つ1つがいつも新鮮で、また次は違うものを読みたい、と思う。 彼の作品が今後増えることはないのは残念だけれど、今までの作品を全て読み終えるまでには当分時間がかかりそうである。
本日もお読みくださりありがとうございました(^o^)